平和で純真無垢な若者が、狂気の世界に突如放り込まれてドンパチやるFPS「FARCRY(ファークライ)」シリーズの第4弾、「FARCRY4」をプレーしてみた。筆者は「FARCRY3」からプレーしているが、ぶっ飛んだ感じの世界観が好きで、今回の発売も楽しみにしていた。ただ他のプレイヤーさん(特に海外の方に多い気がする)が話題にしているが、今回はいまいちシナリオに対する評価がよろしくないらしい。
本作の主人公は幼くしてアメリカに移住したため、舞台となっているキラット国の情勢や文化はもちろん、自分の両親に関しても知らないことが多く、ゲームプレーを通してそのルーツを探っていくというスタイルになっている。そのためか、特に序盤は事情がよく呑み込めず、右も左もわからない状態で否応なく王立軍とゴールデンパスという2大勢力の戦争に巻き込まれてしまう。
「これは自分の戦いだ」という覚悟が決まらないまま、なんとなく惰性で人殺しに手を染めることになるため、主人公に感情移入するのが難しい。その点「FARCRY3」はよかったと思う。いきなり戦闘の渦中に放り込まれるのは変わらないが、「友達を助けないと!」という必然性があるので殺しを正当化できた。そんなわけで状況がシンプルだった旧作と比べて今作は話がわかりにくいと感じたので、ストーリーをまとめてみることにした。完全なるネタバレを含んでいるので、自分で真相を見つけたい人はそっとブラウザを閉じてほしい。
では、どうぞ。
モハンとイシュワリの結婚
大雪に覆われた山脈と緑豊かな大自然に抱かれた、信仰と神秘の国キラット。この国では世襲による王政とキラ神への信仰によって伝統的な文化を築いていた。王の側近として仕えていたモハン・ゲール(本編の主人公であるエイジェイ・ゲールの父親)は伝統と信仰を重んじる男で、古式の取決めに則り、幼いころに両親が決めた婚約相手のイシュワリ(エイジェイの母親)と結婚。
信仰の象徴である巫女タルン・マタラであったイシュワリには多額のお布施が献上されることから、経済的にも恵まれた二人は平和で幸せな家庭を作っていくことになる。同時にモハンも近衛兵への昇格が決まり、公私ともにまさに順風満帆な人生と思われていた矢先、クーデターを画策する国家主義者の武装集団が王宮を襲撃する。モハンをはじめとした近衛兵が応戦するも、西洋式の近代兵器で武装した集団には歯が立たず、王は射殺されてしまう。王政国家の重要な礎を失った瞬間だった。
白馬の騎士か?悪魔の使者か?
王政復古を掲げて皇太子を擁立した王党派のモハンは、国家主義者の排除と王宮の奪還を目指すものの、高度に組織化された武装勢力に太刀打ちできなかった。緒戦で連敗を続けた王党派は徐々に劣勢に立たされ、国内の主要拠点は敵の手に落ちていった。明らかな形勢不利の中で、彼らにとっては「白馬の騎士」とも呼べる男が現れる。
香港出身で王家の血筋を引いていると自称するパガン・ミンは、自身の傭兵部隊を率いてモハンへの助力を申し出た。国家主義者達と比肩する装備を備えた傭兵軍と合流した王党派は、これを契機に形成を逆転。国家主義者の支配地域を次々と奪還し、最後にはシンボルである王宮も取り戻すことに成功する。
思わぬ反乱
王宮を奪還して勝どきを上げる王立軍の兵士たち。モハンも旧近衛兵の仲間たちと勝利の抱擁を交わすが、突如彼らは味方からの銃撃を受けて倒れた。事態を呑み込めないまま呆然と立ち尽くす仲間たちは格好の標的となり、次々と銃弾を受けて倒れていった。仲間に銃口を向けているのはパガンが引き連れてきた傭兵部隊だ。
彼は王党派の勝利を確認すると皇太子を殺害し、旧近衛兵出身の者たちを排除していった。パガンは最初から自分がキラットの国王として君臨するために、王党派の軍事顧問という形で介入し、その機会をうかがっていた。モハンは一握りとなった仲間と共に修羅場を脱出し、身を隠した。
すべてはふりだしに戻る
その後、パガンは自身の政権を樹立するとともに、素早く国内に対するプロパガンダを実行した。それによって彼は正当に王位を継ぐ者として、偽りの大義名分を手にすることに成功する。王立軍を名乗るパガンの軍には志願者が殺到して着実に勢力を広げていく一方で、戦略を持たず組織力にも欠けるモハンとその勢力は、賊軍として追い詰められつつあった。
タルン・マタラであるイシュワリは、反乱軍を組織してそのリーダーになるようモハンに託宣を授け、彼もその言葉に従った。モハンとその仲間が金の道を進んでいたというイシュワリの夢にちなみ、組織名を「ゴールデンパス」と命名した。パガンに対して反抗の狼煙が上がった瞬間だった。
革新と伝統
“タルン・マタラを国家元首とし、摂政が政権を担う”という理想を掲げるモハンは、キラ神への信仰に基づく国家の樹立を目指していた。伝統を何よりも重んじる彼の思想は、ときに革新性や柔軟性に欠けており、それが王立軍との戦術差として戦況にも悪い影響を及ぼしていた。イシュワリは戦力確保のために女性を積極的に採用すべきと考えていたが、古い思想のモハンには受け入れがたかった。
その後、キラット国内の政情不安を良しとしないアメリカ政府がCIAを経由してゴールデンパスに武器を供給。親米的な政権をキラットに樹立したいという狙いに気づいていたモハンだったが、背に腹は代えられず彼らの申し出を受け入れた。物資のおかげて局所的な戦闘には勝利することができたものの、大きく勢力を盛り返すには不十分だった。戦況が好転しないまま徐々に追い詰められていったゴールデンパスは、王立軍へ寝返る者がでるなど、統率にもほころびが出始めていた。※この頃、主人公のエイジェイが誕生する。
最後の手段
追い詰められたモハンは起死回生の逆転を狙い、イシュワリをスパイとしてパガンのもとへ潜入させることを決意する。王党派とパガンが協力体制にあった頃、彼がイシュワリに好意を寄せていたことを知っていたモハンは自分の妻を人身御供として利用する決心を固めたのだ。しかし、この時点でモハンの作戦は破たんを来していた。ゴールデンパスの運営方針で意見の衝突が絶えなかった二人の夫婦仲は冷え切っており、更にこのスパイ作戦がイシュワリの心に最後のくさびを打ち込んだ。「自分の無能を妻子の犠牲で補うのか?」と。
パガンはイシュワリをモハンが差し向けたスパイであることを承知で、王立軍に引き入れた。スパイ活動による多少の損失は見越したうえで、イシュワリを真の意味で取り込める自信があったのだろう。伝統に縛られることがなく、自信にあふれた彼の言動は次第にイシュワリの心をとらえ、彼女はパガンを愛するにようになってしまう。パガンの完全な勝利だった。
モハンの最後
その後、パガンの子供を身籠ったイシュワリは女の子を出産する。王立軍への致命的な一撃を与えるべく、彼らの情報を期待していたモハンの失望は大きかった。自分の作戦が潰されただけでなく、自分の女も寝取られたのだ。男としてこれ以上の屈辱はなかった。激高したモハンは恥辱をそそぐため、裏切りの象徴とも言えるパガンとの間にできた子供を殺してしまう。自分の子供を殺されたパガンの怒りは相当のものだったが、イシュワリはそれ以上の怨念をモハンにぶつけた。最愛の娘を殺した報復として、夫であるモハンを暗殺したのだ。
このとき主人公エイジェイはまだ乳飲み子で、人々が殺しあう狂気の世界に身を置くには若すぎた。イシュワリはパガンの庇護下を離れ、エイジェイをキラットの世界から引き離すためにアメリカへと逃避した。モハンを失ったゴールデンパスは一層弱体化が進むものの、彼の意志は後継に託された。のちに初の女性兵士から実績を積み上げたアミータと、モハンを尊敬し伝統を重んじるサバル
という二人のリーダーが台頭していく。
※ここまでがFARCRY4のバックグラウンド。ただし幼少期にキラットを離れ、母からも過去の経緯を聞かされていないエイジェイはこれらの背景を知らないまま成長していく。
帰ってきたエイジェイ(ここでゲームのオープニングだ)
アメリカに来てから凡そ20年、エイジェイは立派な青年へと成長していた。しかしイシュワリの体は病魔に蝕まれており、治療の甲斐なく彼女は亡くなってしまう。彼女は死を前にしてエイジェイに遺言を託していた。「私の遺灰を故郷キラットのラクシュマナにまいてほしい」と。エイジェイは自分のルーツはおろか、”ラクシュマナ”の場所すらわからぬまま、故郷キラットを目指す。エイジェイにとっては遺灰を届けるだけの静かな帰郷になるはずだったが、「モハンの息子」という経歴をもつ彼の動向は、ゴールデンパスや王立軍から監視されていた。
先手を打ったのはゴールデンパスのほうだった。劣勢で厭戦気分が蔓延する中、創設者の忘れ形見であるエイジェイが味方に加われば、兵士の士気も高まり、反撃の糸口もつかめるかもしれない、そう考えたサバルは幹部のダルパンを派遣し、エイジェイの入国をサポートした。しかし、パガンがこれに対して待ったをかける。エイジェイが乗り込んだバスを警備隊に足止めさせ、ダルパンを捕えたうえでエイジェイを拉致してしまう。
シークレットエンディング
分岐条件:デプルールの屋敷でパガンの指示に従い、15分ほど会食の場にとどまって彼を待つ
拉致されたエイジェイはダルパンとともに、パガンの腹心であるデプルールの屋敷へ連行される。テロリストとみなされているダルパンに対するパガンの対応は苛烈を極めたが、なぜかエイジェイに対しては紳士的だった。パガンは愛するイシュワリの息子であるエイジェイにキラットの国を譲るつもりで、エイジェイの身柄を確保したのだった。その後、パガンの案内でラクシュマナに導かれたエイジェイは遺言通り母親の遺灰を無事に安置することができた。(終了)
※本作ではこのあとのストーリーは描かれていないが、可能性としては2通りのパターンが考えられる。①遺言を果たせたのでアメリカに帰国する ②パガンの王立軍に参画してゴールデンパスを壊滅させ、キラットの王座を継ぐ。
①のストーリー:
この時点でキラットの狂気に染まっていないエイジェイは、戦争へ積極的に介入する理由はない。パガンとの血縁関係はないわけだし、狂気じみたパガンに心酔したり、肩入れする根拠もない。オカンの遺言は無事に果たせたわけだから、もといた世界(アメリカ)に帰ろうとしてもなんら不思議はない。またパガンも、イシュワリが逃げたときに積極的に追わなかったことからも、アメリカに帰るというエイジェイの選択を邪魔することはないと思われる。
②のストーリー:
内乱中のキラットへわざわざ来させたというイシュワリの意志をエイジェイが汲んだとしたら、そのままパガンの王立軍に参画する可能性がある。その場合ゴールデンパスに最後のとどめをさした後、政権をエイジェイに譲渡(王位を譲位)したと思われる。ただし、これをやるとパガン腹心のユマが決起するだろうから、そっちも潰す必要があると思うが、いずれにしてもエイジェイ王の誕生となる。
ゴールデンパスとともに
分岐条件:デプルールの屋敷でパガンの指示に従わず、屋敷から逃げ出す
拉致されたエイジェイはダルパンとともに、パガンの腹心であるデプルールの屋敷へ連行される。テロリストとみなされているダルパンに対するパガンの対応は苛烈を極めたが、なぜかエイジェイに対しては紳士的だった。パガンは愛するイシュワリの息子であるエイジェイにキラットの国を譲るつもりで、エイジェイの身柄を確保したのだった。しかし、そのような意図をエイジェイが汲みとれるはずもなかった。彼の狂気的な対応に不安を感じたエイジェイは屋敷からの脱出を図る。
その頃、ダルパンのSOSを受け取ったサバルはエイジェイ救出部隊とともに、デプルールの屋敷内に潜入していた。運悪く潜入は探知されてしまうものの、多大な犠牲を払って、エイジェイはゴールデンパスの本拠にたどり着くことに成功する。モハンの息子として熱く歓迎するサバルとは対照的に、ダルパンと多くの兵士を犠牲にしたことへの嫌悪感を隠さないアミータ。二人のリーダーの思惑はまるで対照的だった。
内部分裂
その後、人質救出や基地解放などを通じてゴールデンパスに貢献していったエイジェイは、サバルとアミータから頼られる存在となっていた。しかし、伝統を重んじる保守派のサバルと慣例に囚われない革新派のアミータの思惑が一致することはなく、対王立軍の戦術すらも一本化できていなかった。特に王立軍が資金源としていた麻薬の取り扱いについて、二人の思惑は全く異なっていた。医薬品や主要産業として活用したいアミータ、人民を腐敗させる麻薬を国内から一掃したいサバル、エイジェイはどちらをリーダーとして仰ぐのか、選択を迫られていた。
ヌーアの悲劇
両親のルーツを探るべく、父親モハンが昔住んでいた家を訪れたエイジェイは、そこに住み着いていたヨーギーとレジーにはめられ、ヌーアが支配する闘技場にぶちこまれる。そこでは挑戦者同士が本気で殺しあう賭け試合が行われており、エイジェイは否応なくデスマッチに参加させられてしまう。その後、トーナメントを勝ち抜いた彼に、ヌーアは一つの依頼をしてきた。王立軍に囚われている家族を解放してほしいと。エイジェイは人質を確保しているデプルールの確保に成功するが、不幸にもヌーアの家族はかなり以前に始末されていたのだった。
家族を人質に取られていたとはいえ王立軍に属し、闘技場で多くの命を奪ってきたヌーアを粛清するようアミータとサバルから指示を受けたエイジェイは、闘技場で彼女と対峙した。人質となっていた家族の顛末を聞いた彼女は、自分の体をククリで切り裂き、野獣が放たれた闘技場に身を投げたのだった。(ゲームでは主人公が引き金を引くことも可能)
監獄からの脱出
エイジェイのもとに突然ウィリスと名乗る男から通信が入る。CIAに所属する彼は極秘のミッションを遂行中であり、両親の情報提供と引き換えにエイジェイに協力を求めてきたのだった。王立軍を始末する仕事であることと、情報そのものに惹かれたエイジェイは彼の申し出に乗ることにする。
しかし「王立軍の中に潜伏している裏切り者のCIA職員を始末したい」ウィリスの思惑と、「エイジェイを確保したい」パガンの思惑が合致し、共闘したウィリスは土壇場でエイジェイを裏切り、王立軍に引き渡してしまう。エイジェイは脱出不可能と言われる、ユマが統治する監獄へ収監されるが、峻険な崖と多くの監視を突破して無事に脱出することに成功する。
ユマとの対決
王立軍は活動資金を確保するため、キラット国内の遺物を回収して海外に売りさばいており、それを統括しているのがパガン腹心のユマであった。しかし、彼女は本来の目的から逸脱し、キラットの遺物や宗教にのめりこんでいった。前線の兵士すらも遺物の回収作業に従事させるなど、ユマの心酔ぶりは度を超えており、それを快く思わないパガンはユマの排除に乗り出した。
彼はプロパガンダに利用しているテレビ放送を使って、ゴールデンパスの行く手に腹心のユマが立ちふさがることを強烈にアピールする。エイジェイとユマの対峙を煽っているもので、これまでのエイジェイの活躍を見ればユマを切り捨てたも同然だった。エイジェイはユマの待つ鉱山に侵入し、パガンの期待通り、彼女の抹殺に成功する。
最終決戦とその後(アミータバージョン)
分岐条件:ゴールデンパスのリーダーとしてアミータを選択し、サバルを排除する
ゴールデンパスの内部分裂は修復の余地がないところまで広がっていた。パガン打倒後の統一を目論むアミータは、危険分子であるサバルの抹殺をエイジェイに依頼し、彼もしぶしぶ了解する(サバルを殺さずに解放することも可能)。サバルを排除して組織を一つにまとめることに成功したゴールデンパスは、王立軍との最終決戦に臨むべく、パガンの北部要塞に総攻撃をしかけ、彼を王宮へ追い詰めることに成功する。
一人になったパガンと対峙したエイジェイは、父親の死の顛末とパガンとイシュワリの関係を知ることになる。パガンに導かれるまま、王宮の裏手にあるラクシュマナで母親の遺灰を安置したエイジェイは、ここにきてようやく母親の遺言を全うすることができたのだった。(パガンは殺すか、見逃すか選択が可能)
王立軍を排除して全権を掌握したゴールデンパスは、アミータの支配下で政権運営を担うことになる。彼女は王立軍から奪った麻薬畑をキラットの主要産業にしたいと考えており、栽培から精製に至る工程を国民を使って管理することを目論んだ。しかし、麻薬の生産の従事したくない多くの国民はこれを拒否。アミータはパガン政権のときと同様に銃で脅して若者を強制的に使役させた。
「すべては新しいキラットのため」 そう語るアミータだったが、その眼はパガンと同じ狂気を宿していた。(終了)
最終決戦とその後(サバルバージョン)
分岐条件:ゴールデンパスのリーダーとしてサバルを選択し、アミータを排除する
ゴールデンパスの内部分裂は修復の余地がないところまで広がっていた。パガン打倒後の統一を目論むサバルは、危険分子であるアミータの抹殺をエイジェイに依頼し、彼もしぶしぶ了解する(アミータを殺さずに解放することも可能)。アミータを排除して組織を一つにまとめることに成功したゴールデンパスは、王立軍との最終決戦に臨むべく、パガンの北部要塞に総攻撃をしかけ、彼を王宮へ追い詰めることに成功する。
一人になったパガンと対峙したエイジェイは、父親の死の顛末とパガンとイシュワリの関係を知ることになる。パガンに導かれるまま、王宮の裏手にあるラクシュマナで母親の遺灰を安置したエイジェイは、ここにきてようやく母親の遺言を全うすることができたのだった。(パガンは殺すか、見逃すか選択が可能)
王立軍を排除して全権を掌握したゴールデンパスは、サバルの支配下で政権運営を担うことになる。彼はモハンの意志を受け継ぎ、巫女であるタルン・マタラ(バドラ)を国家元首にしたて、自身が摂政として政務を担う組織を作った。伝統を重んじる彼は、キラ神への背信の象徴とも言えるアミータの部下を次々と粛清していく。バドラの人生は? 仲間の命は? 疑問を投げかけるエイジェイに対して、「お前にもいつかわかる」 そう語るサバルの目は、パガンと同じ狂気を宿していた。(終了)