私が「dead island」というゲームを初めて知ったのは、 4gamerでの記事だ。
元来、私は非常に怖がりな性格で、ゾンビ系のゲームにはイマイチ手が伸びなかったが、「予告映像があまりにもすばらしい」という評判から、このゲームに興味を持った。実際、その映像は前評判通り、とってもスンバラシイ もので、”単に映像がキレイ”というだけでなく、見せ方が洗練されてると感じた。
映像は、ホテルの窓から転落した少女の”事故発生数分前”を逆再生しながらたどるもので、残虐なシーンであるにも関わらず、非常にアーティスティックな映像になっている。スプラッター系の”ちょん切れる映像”が苦手でなければ、ムービーを実際にご覧頂きたい。
予告編ですっかりこのゲームのファンになってしまった私は、自分が怖がりだということはすっかり忘れて、「dead island」をAmazonで予約し、発売直後に早速プレーしてみた。ゲームの紹介とともにプレーの感想などをまとめてみた。
dead islandのあらすじ
パプアニューギニア沖の赤道付近に位置するバノイ島は、近年まで島の大半が未開の地として社会から隔離されていた。 長らく人を寄せ付けなかった島には、青く透き通る海や純白の砂浜、珍しい野鳥の溢れる森など、手付かずの自然が随所に 残っており、それらを観光資源としたリゾート開発によって、島は多くのセレブが集まる「地上の楽園」となっていった。
だが、楽園と思われた島で、原因不明のゾンビアウトブレイクが発生。「ゾンビに襲われた者はゾンビ化する」という負の連鎖 によって、島は一夜で死者が徘徊する地獄へと変わってしまう。容赦なく死が迫りくるこの島で、生きるために残された道は”島から の脱出”しかない。おびただしい数のゾンビをかわしながら、脱出の道を探るプレイヤーは、少数の生存者グループと合流し、彼らと 行動を共にすることとなる。
無事この島から脱出することはできるのか、そしてゾンビアウトブレイクの真相を解き明かすことができるのか、すべての鍵は プレイヤーの行動次第。死にたくなければ、武器を手に戦うしか道はないのだ。
ゲームシステム
dead islandでは、Grand Theft Autoのようなオープンワールドな世界で、NPCからのクエストをクリアしながらストーリー を進めていくというゲームシステムになっている。プレイヤーはバノイ島のあらゆる場所を自由に探索することができ、アイテムや情報 を集めることが可能だ。ゾンビを片付けながら、バノイの美しい自然を楽しむこともできる(心理的にそんな余裕があればの話だが・・・)。 ただし、Falloutシリーズのようにプレイヤーの選択によって物語が分岐していくようなことはないため、シナリオという観点では一本道なゲームである。
NPCから提示されるクエストには、物語の進行に影響する「メインクエスト」と、経験値やアイテムがもらえるサイドクエストに わけられる。後者は物語の進行には全く影響しないが、いち早く経験値やアイテムを手に入れることで、サバイバルを有利に進めら れるようになることから、面倒臭がらずに仕事を受けてみるといいだろう。人生もゲームも、”急がばまわれ”なのだ。
特にサイドクエストの内容は、依頼人(NPC)それぞれの思いや人柄を反映したものが多く、例えば「思い出の品を取って きてほしい」「夫の安否を確認して!」といったものがあるので、ゲームの世界感がよりリアルに感じられるはずだ。更に、ミッションに よってはバノイ島の状況を知る糸口となることもあるため、ゾンビアウトブレイクの原因究明につながるかもしれない。ゲームへの没入感 が増すので、是非プレイしてみよう。
周回プレイも楽しめる4人のプレイアブルキャラクター
本作ではプレイアブルキャラクターとして、4人の男女が用意されており、ゲーム開始時にいずれかのキャラを選択することになって いる。各キャラは、単に見て呉れの違いだけでなく、習得可能なスキルや得意な武器にも違いがあるため、キャラを変えてプレイする 面白みがある。1周目は体力が豊富なキャラでゲームに慣れておき、2周目は投げナイフキャラや銃キャラを育成するといったプレイも可能。 無論、1周目から尖ったキャラに育成してもよい。
プライアブルキャラクターは下記の通り。
シアン・メイ (女性)
HPが低いものの、豊富なスタミナを活かした立ち回りを得意とするキャラクター。4人のキャラの中で唯一銃火器系スキルを持たないキャラではあるが、その分斬撃系のスキルが豊富であり、刀やナイフなどの刃物による戦闘を得意とする。
サム・B (男性)
4人のキャラの中で最も体力が高く、HPの自動回復や高い防御力(ダメージ軽減スキル)を有するタフキャラ。4人の中で唯一タックル攻撃が可能で、他のスキルと併用することで、多少のゴリ押しは効くようになる。メイスなどの打撃系武器が得意。
ローガン (男性)
元アメフト選手という設定のためか、投擲系武器の扱いに長けている。投げた武器が一定確率で手元に戻るスキルや、一定範囲に投擲ダメージを与えるスキルなどがあることから、銃を使わずに遠い間合いから敵を仕留めるのに有利。
プルナ (女性)
銃弾の所持弾数増加やリロード速度UPなど、銃火器に特化したスキルを持っており、銃撃戦が得意。一見、最も有利なキャラのように見えるが、銃を手に入れるまでが大変。尚、弾は常に枯渇気味なので、銃入手後も撃ちまくれるわけではない。
接近戦主体のシビアな戦闘システム
本作の特徴は、なんといってもその戦闘システムにある。代表的な要素である、武器/スタミナ/スキルという3つの視点から見てみよう。
[武器] 手に取れるあらゆるものを武器にしろ
プレイヤーは手近に落ちているあらゆるものを手に取り、それを武器とすることができる。フィールド上には、カヤックのオールや鉄パイプ、ナイフなどがあるため、それらを使ってゾンビに立ち向かうことになる。武器にできるものはナイフのような斬撃系武器、レンチといった打撃系武器、 火炎瓶などの投擲系武器、ショットガンといった銃火器があり、これらはフィールド上の至るところで手に入れられる(銃火器については シナリオ後半になるまで入手困難)。ただし、武器は入手が容易である反面、耐久度という概念があり(銃火器にはない)、何度も使用 していると使い物にならなくなる。例えば、刃物であれば刃こぼれしたり血糊がつくことで、切れ味(=攻撃力)が落ちてくるのだ。
命綱とも言える武器の状態をベストに保つため、耐久度の減った武器は定期的な修理が必要だ。修理は島内の要所に設置されている 作業台で行うことができるが、多少の金銭が必要になる。金はゾンビの懐からくすねたり、ゴミ箱を漁ったり、クエストをこなすことで貯めていくこと になる。また、設計図や備品を集めることで、武器に特殊な属性を付与させることもでき、そういった武器の攻撃力は飛躍的に高まる。カスタマイズ できる武器の種類は豊富なので、是非お気に入りの得物をハンドメイドしよう。
[スタミナ] ヒーロー的な立ち回りは死を招く
攻撃力の高い武器を手に入れられれば後は楽勝かと思いきや、全くそんなことはない。プレイヤーにはスタミナという概念があり、走ったり、 武器を振り回したり、蹴り飛ばしたりするたびにスタミナを消費する。逆に言えば、スタミナなしには走ることもままならないということであり、 これによってゲームのリアリティが増している。現実世界で考えれば、延々と全力疾走できたり、武器を全力で振り回し続けることはできないはずだ。 これがゲーム内でうまく再現されている。
スタミナゲージは比較的短時間で回復するものの、ゾンビに囲まれている状態でスタミナ切れを 起こせば、走ることも武器を振るうこともできず、無防備なままその身を晒すことになる。どんなにスキルが増えてキャラが成長したとしても、この息切れ の概念があることで、シナリオの終盤まで緊張感を持ってプレイすることができる。レベルが上がれば無双乱舞で楽勝なんてことはないのだ。
[スキル] スキル獲得によって操作キャラクタが成長していく楽しみもあり
短調になりがちなゲームに、よいエッセンスを注入しているのがスキルツリーだ。4人いるキャラはそれぞれに固有のスキルツリーを持っており、 プレイヤーの好みに従ってキャラを育成していくことが可能だ。プレイヤーは1段階レベルアップするたびに、スキルポイントを1つ獲得するので、 それを自由に配分していくことができる。
ただし、パッチ適用後のレベルキャップは60であるのに対して、スキルツリーは99ポイント分存在するため、 すべてのスキルをMAXにすることはできない。スキルのなかには有効度の高いものとそうでないものがあり、それはプレイスタイルによっても変わってくる ことから、戦略的にどのスキルを獲得していくかを考えるのも楽しみの一つといえる。
主なクリーチャー
本作の主な敵はゾンビだが、特殊感染者と呼ばれる変異体も登場する。
ウォーカー
島内で最もお目にかかる率が高い敵で、いわゆる一般的なゾンビ。動きはトロいことから単体では脅威にはならないが、基本的に集団で 行動することが多いことから侮れない。特に3人以上の集団は避けたるほうが無難である。さまよい歩いているタイプと寝ているタイプの2種類があり、 後者は死体と見間違えてしまうことが多く、そばを通り過ぎるタイミングでいきなり襲われることがある。ゲーム的に脅威というよりも精神的に脅威であり、 かなり心臓によろしくない。私はこれに何度も驚かされ、そのたび「ダァぁぁっっーー」と叫んでしまった。
インフェクテッド
日本語に直訳すると感染者の意味。ウォーカーは肉体の腐乱・損傷が激しいのに対して、インフェクテッドは生身の人間に近い外観であることから、 ウイルス感染して間もないゾンビだと思われる。「Dawn of the dead(映画)」に出てくるようなゾンビで、非感染者を見つけると全速力で疾走して くる特徴がある。ゲーム序盤は単体で出現することが多いが、終盤になるにつれ集団で襲いかかってくる場面が増えるため凶悪度が増す。ターゲットを 見つけると絶叫しながら近づいてくるため、声が聞こえたら敵に捕捉されている(視界に入っている)と考えて間違いない。高所であってもサクっと登ってくる ので、敵に気づかれたら腹をくくって殲滅させよう。冷静に対処すれば始末できるはずだ。
サグ
ガタイのよい大型ゾンビ。動きはウォーカーよりも更にトロいが、体力と攻撃力がハンパなく、始末するのにかなり手間取る。サグが複数で登場することは 滅多にないが、ウォーカーを伴って出現することが多く、ザコに気を取られている間にサグの強烈パンチを食らってお陀仏的なことにならないよう注意が必要。 基本戦術としては、周りのウォーカーを一掃してから、タイマンで倒すのが吉である。
フローター
水辺に出現する特殊感染者。遠距離では、妙な吐瀉物による投擲攻撃を仕掛けてくる。「お前、どんだけゲロする気だ?」ってほど、大量のゲロを 正確なエイミングでカマしてくるため、近接武器のリーチ範囲まで接近するのは難しい。理想的には吐瀉物の射程よりも、更に遠い間合いから銃撃で倒す のが望ましいが、無視できるのであれば素通りが一番だ。ちなみに火炎による攻撃には耐性があるようなので、火炎瓶は無駄になるから避けたほうが良い。
ラム
可愛い名前に相反して、邪悪な見た目のゾンビ。「ハンニバル(映画)」に出くるような、拘束具を付けられたままウイルス感染してしまったゾンビのようで、 両手は不自由なものの、その巨体を活かして突進攻撃を仕掛けてくる。拘束具の影響なのか、頭部を除く前面は、あらゆるダメージを無力化してしまう。 HPを減らすためには、ヘッドショットを狙うか又は背後に回りこんで攻撃するしかない。突進攻撃(タックル)が非常に邪悪だが、サイドステップを覚えてしまえば、 避けるのは簡単なので、冷静に攻撃を見極めよう。背中をとったらメッタ斬りにしてやればよい。
スーサイダー
日本語に直訳すると自殺する者という意味。ウイルスの変異に体が対応しきれなかった個体のようで、上半身が異常に膨張しており、刺激によって 爆死してしまう。死亡時又は一定距離まで近づくと自爆することから、この特性を活かして、周囲の敵を始末することが可能。スーサイダー自身は攻撃を しかけてくることはないものの、自爆による爆風は即死レベルの衝撃があるので、間違っても近くで被弾しないように注意が必要だ。
ブッチャー
ゲーム中、最もお目にかかりたくない敵。一見すると、落ち武者ヘアのジイさんにしか見えないが、その強烈な個性に負けず劣らずな攻撃をしかけてくる。 スペック的には攻撃力とHPを底上げしたインフェクテッドのようなもので、猛ダッシュで接近して強烈な近接攻撃をしかけてくる。攻撃パターンは両手を使った パンチ攻撃だが、その両手は肉片がなくなり骨がむき出しになるほど酷使されており、ラッシュ攻撃の激しさを想像させる。もし銃を持っているなら、接敵される 前に、頭部にありったけの弾丸をぶち込んでやるべきだ。ここで弾を惜しんではいけない。それほどの強敵。
現実にゾンビがいたら、こんな感じなんだろうな という妙なリアル感が恐怖を煽るゲームシステム
総合評価:70点
- 良い点
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- 無双できないため、緊張感が終盤まで続く
- 随所に生存者がいるなど、リアルな感じがよい
- RPG感覚でキャラを育成できるので長く遊べる
- 武器のカスタマイズが面白い
- 仲間と強力(マルチプレイ)してストーリーを進められる
- 悪い点
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- ストーリーが若干貧弱
- 差し込みムービーがチープすぎる
- 画面の動きが独特なので、慣れないと酔う
基本的に戦闘の主体は接近戦であるため、全般的にシビアなゲーム展開が求められる。レベルが上がれば無敵といった状況にはならないことから、 ゲーム終盤まで緊張感をもってプレイできるのがよい。戦国無双シリーズのような「斬って斬って斬りまくる」というようなものを期待している方にはつまらない 作品だが、よりシビアに、ドキドキしながらプレイしたいという方には是非オススメしたい。
ただ、全般的によい作品だと思うが、なぜゾンビアウトブレイクが発生したのかという細部が練りこまれておらず、ストーリーの納得感に欠けているのが マイナスポイントだと思う。また、予告動画のデキが良すぎたせいもあるのだが、ゲーム中に流れるカットシーンのクオリティが低く感じられた。もうちょっと美麗 で雰囲気のある動画が作れたのではないかと思ってしまう。また、これは完全に個人差の問題だと思うが、画面の動きが他のゲームと違うため、 慣れないうちは船酔い症状が出るかもしれない。うまく説明できないが、妙に慣性のかかった動きをするように感じた。キャラの操作がもっさりしているというか、 キー操作に反応するのに一瞬のタイムラグがあるような感じだ。ただ、これらの操作感はゲーム開始後しばらくすると慣れてしまったので、FPSゲーに親しんでいる ユーザには気にならないかもしれない。
PC版はゴア表現の修正はなされていないので、かなり激しい部位損壊を目にすることになる。血しぶきや首が吹っ飛ぶのが気にならんよ という方は、 是非一度プレイして頂きたい。