『Max Payne3』は、「Grand Theft Auto」でおなじみの「Rockstar Games」が開発・発売しているハードボイルド系TPS(Third-Person Shooting)だ。ナンバリングの通りシリーズ3本目の作品であり、前作までの流れを踏襲しながら、妻と子供を殺された刑事「マックス・ペイン」のその後を描いた内容となっている。シリーズを通して非常に重厚で骨太なストーリーが特徴で、是非とも小説で(活字で)じっくり味わいたいと感じさせる、大人向けの作品に仕上がっている。ストーリーが秀逸というだけでなく、ゲームシステムも特徴的でバレットタイム(*1)やキルカメラ(*2)、シームレスなカットシーン(*3)など、プレイヤーを引き込む要素が盛り込まれている点もゲーマーとしては見逃せない。
さて、本作でも主人公マックスは巨大な陰謀に巻き込まれてしまうわけだが、ストーリーが複雑で1周目のプレーでは理解が追い付かない人もいるだろう。実際筆者もそうで、3周くらいグルグル回ってカットシーンを何度も見つつ、ゲーム内アイテム(情報の断片が書かれたメモ等)をまめに拾い集めて初めて、「あぁ、そういうことね」と腹落ちできた。そんなわけで完全ネタバレになるが、本作のストーリーを整理してみた。尚、登場人物が多いのも理解を難しくしているので、別途人物相関図も作ってみた。理解を深めたい人はこちらも参考にどうぞ。
(*1)バレットタイム~映画「マトリックス」で敵エージェントや主人公ネオが使える特殊技で、銃撃戦の時間の流れをスローにできる効果。敵を倒すことで蓄積したゲージを消費することでバレットタイムを発動できる。
(*2)キルカメラ~特定の場所や最後の一人を倒した場合に、銃弾の発射から着弾して敵が死ぬまでの一連のアクションをリプレイできる効果。アクロバティックな姿勢からHSが決まったりすると、一人でドヤ顔を決めながらほくそえんだりできる。
(*3)シームレスなカットシーン~ゲームプレイの合間に映画のようなカットシーンが入ってストーリーテリングされるが、ゲームに自然と溶け込んでおり、また画面もシームレスなので映画の主人公をそのままプレイしているかのような錯覚に陥る。全編を通してロード画面という概念がなく、カットシーンの再生中にステージデータ等が読み込まれているようだ。故に、2周目であってもカットシーンをスキップできないという負の側面もある。
本作は過去のシリーズをプレイしていなくても理解できるが、一応概略を示しておく。
『Max Payne』
元ニューヨーク市警の刑事で麻薬捜査官でもある主人公「マックス・ペイン」は、新種の麻薬Valkyrでハイになったギャングに妻子を殺されるという過去を持っていた。捜査の過程で麻薬をめぐる大きな陰謀に巻き込まれながらも真の敵を見つけて妻子の復習を果たすというストーリー。
『Max Payne2』
1作目の後、ニューヨーク市警の刑事に戻ったマックスが、前作に登場した女性モナ(死んだと思われていた)と再開して、再び大きな事件に巻き込まれていく。
『Max Payne3』
妻子の死をひきずっているマックスは過去の記憶から逃れるため、旧友パソスの誘いからブラジルでボディガードの仕事につく。警護していた女性の誘拐事件を発端に、大きな陰謀に巻き込まれていく。
では、前置きが長くなったが、『Max Payne3』のストーリーラインをどうぞ。
カクテルパーティーと招かれざる客
マックスと相棒のパソスは、サンパウロ市内のとある高層ビルの屋上でボディーガードの任務についていた(Chapter1 Something Rotten in the Air)。護衛対象は地元の不動産王ロドリゴ・ブランコとそのファミリーで、政財界の大物と金持ちが集まるパーティに同行していた。イベントは恙なく平和に進んでいたが、突如その会場を地元のギャングであるコマンド・ソンブラが襲撃し、ロドリゴと妻のファビアナを連れ去ってしまう。大勢の招待客の中から迷いなく二人を拉致していることから、ギャング達の目当てがロドリゴ夫妻であることは明白だった。
マックスとパソスはすぐさま彼らを追跡し、階下のフロアでファビアナを無事に奪還した。その後、地下駐車場から逃げ遂せようとしていたギャングを始末し、間一髪のところでロドリゴの救出にも成功する。全てが片付いた後、申し合わせたように地元警察とUFEの部隊が到着。虫の息のギャングに止めを刺していくUFEのバハマイヤーと、聴取して捜査したい警察のダシウバとの間でいざこざがあったが、”政治”に関心が持てなかったマックスは彼らを無視して帰宅の途についた。
コマンド・ソンブラの逆襲
誘拐未遂の一件から数日、事件の恐怖を紛らわせるためか、ファビアナとその妹ジョバンナ、そしてブランコ兄弟の3男であるマルセロの3人は自家用ヘリでナイトクラブへと繰り出した。当然、パソスとマックスも護衛として彼らに同行することとなる(Chapter2 Nothing but the Second Best)。若者でごった返すフロアで3人を護衛するのは至難の業のように思われたが、むしろ人混みにまぎれてしまうほうが目立たないだろうとマックスは踏んでいた。しかし、行きつけのクラブへ来ることを事前に予期していたコマンド・ソンブラは、容易に3人を見つけ出し、マックスの隙をついてファビアナとジョバンナの二人を拉致してしまう。
逃げるギャングを追跡するため、上空で待機していたパソスの操縦するヘリに飛び乗ったマックスは、今まさに飛び立とうとしている1機のヘリを発見する。ファビアナとジョバンナはコマンド・ソンブラのヘリで連れ去られようとしていた。ジョバンナは拘束するギャングの腕をうまくすり抜け、ヘリポートから逃げ出したものの、ファビアナを乗せたヘリはそのまま飛び立ってしまう。ギャングに追い立てられているジョバンナと連れ去られたファビアナ、どちらを追跡するかの選択に迫られた二人だったが、パソスのとっさの指示でジョバンナの救出に向かった。屋上で逃げ惑う彼女に迫るギャングを一人ずつ片付けながら、やっとのことで彼女の確保に成功する。
熱い抱擁を交わすパソスとジョバンナの雰囲気から、マックスは二人が恋人同士であることがわかった。パソスはファビアナの救出よりも、自分の恋人の救出を優先していたのだ。結局、ボスの妻を連れ去られるという大失態を演じたマックスとパソスは、逃げたヘリの行方やファビアナの安否など、何の手がかりも得られないままロドリゴの元へと戻った。
誘拐と身代金
ファビアナの誘拐から数日、ブランコファミリーのもとに身代金要求の連絡が入る。要求された金銭は法外なものであったが、妻の安否を気遣うロドリゴは支払いを即決。金銭の引き渡し役をマックスとパソスへ任せることとなった(Chapter3 Just Another Day at the Office)。二人は犯人の指示通り、人気のない深夜のサッカースタジアムに身代金を持参した。グラウンドの中央、遮る物や物陰のない場所で二人はコマンド・ソンブラと対峙し、ポルトガル語の話せるパソスが交渉を牽引した。取引が順調に進むと思われたのも束の間、スタジアムの観覧席から一筋のレーザー光線が光り、ギャングの一人が頭を打ち抜かれた。スナイパーの照準はコマンド・ソンブラだけでなくマックスにも向けられ、左腕を撃ち抜かれてしまう。
誤射ではなく、明らかに「そこにいる全員を殺そう」という意図が感じられるものだった。マックスは出血のショックから意識が朦朧とする中、スナイパーの射程圏内から逃れるべく、スタジアム内部へと駆け込んだ。医務室で簡単な応急措置を施し、ペインキラーで痛みをごまかした彼は、パソスとともに持ち逃げされた身代金の後を追った。コマンド・ソンブラにも死者が出ていたことから、彼らの仲間でないことは明白だった。横槍を入れてきた奴らの装備状況から、クラチャ・プレトと呼ばれる私兵団であることがわかる。どこからか身代金引き渡しの情報を入手し、それを横取りしようとして待ち構えていたらしい。ただ、このことをコマンド・ソンブラは知りようがなく、マックス達の妨害工作であると勘繰られても仕方のない状況であった。人質であるファビアナを無事に解放してもらうためには、正当な相手に身代金を引き渡し、事情を説明する必要があった。
マックスとパソスの二人は身代金を持って逃げるコマンド・ソンブラの後を追跡するも、クラチャ・プレトに先んじられてしまい交渉人は射殺され、身代金も強奪されてしまう。コマンド・ソンブラに対する釈明の機会すら失ってしまった二人は、かろうじて入手したファビアナの監禁場所と思しき情報を手土産に、スタジアムから脱出した。
マックスとパソスの出会い
スタジアムからの帰路、マックスは今度の仕事が一筋縄ではいかないことを痛感し、自分の人生を呪っていた。しかし、パソスと最初に出会ったときから、波乱の予兆があったことを思い出していた。二人が出会った時期にフラッシュバック。(Chapter4 Anyone Can Buy Me a Drink)
ニューヨークの片隅にある場末のバーで妻子を亡くした悲しみに浸っていたマックスを、警察学校時代の旧友であるパソスが偶然見つけて声をかけた。パソスはマックスが今の自堕落な生活から抜け出すべきだと考え、自身が経営する民間警備会社に彼をスカウトするも、マックスはその申し出を断った。しばらくバーで酒を酌み交わしていた二人だったが、ちょっとしたいざこざから、地元ギャングの息子であるトニー・でマルコを殺してしまう。取り巻きをいなしながらバーを脱出した二人だったが、怒り狂った父親が差し向けた刺客は、マックスのマンションまで押しかけてきていた。こうしてニューヨークでの居場所を失ってしまったマックスは、パソスの申し出を受けざるを得ない状況となった。(フラッシュバックの終了)
ファビアナの救出へ
スタジアムの一件は、コマンド・ソンブラに対して「身代金の支払いには応じない」と言っているも同然だった。当然、人質であるファビアナの命の保証はない。自分たちの主張を裏付ける証拠もない中で、マックスとパソスは先手を取ってファビアナの監禁場所を急襲する作戦を立てる(Chapter5 Alive If Not Exactly Well)。
二人はコマンド・ソンブラの活動拠点があると言われるチエテ河上流にある波止場に向けてボートを走らせた。現場にはファビアナを拉致したヘリや、拘束した形跡があり、彼女が近くにいることは間違いなかった。しかし、マックスの侵入を感知したギャング達は、ファビアナを別の拠点へと移動させてしまう。ボートで逃げる敵に食らいつきながら必死に追跡するも、またも後一歩のところで取り逃がしてしまうのだった。追跡の手段を失い、手掛かりとなる情報もない二人は、なんの成果もあげられないまま引き返すこととなった。
嵌められたマックス
身代金を奪われファビアナの救出にも失敗するなど、失態を重ね続けたマックスとパソスは事の顛末を報告するためにロドリゴの事務所に呼び出される(Chapter6 A Dame, a Dork, and a Drunk)。そこには今回の一件を契機に、ロドリゴに取り入ろうとするUFEのアルマンド・ベッカーの姿もあった。今回の誘拐が一筋縄ではいかないことを察したヴィクターが彼を呼び寄せていたのだ。”家族会議”が一段落すると、ロドリゴとマックスを残し、他のメンバーはヘリで事務所を離れた。しかし、時を同じくして思わぬ事態が発生する。スタジアムで横槍を入れてきたクラチャ・プレトの私兵団が事務所を急襲したのだ。
ロドリゴがオフィスのセキュリティシステムを稼働させようとしたが、なぜかシステムがダウンしており、敵の侵入を止めることができない。マックスとエンジニアはシステムを再起動するため、サーバ室に行かなければならなかった。社長室を施錠して籠城するようロドリゴを促すと、マックスは敵の掃討にかかった。クラチャ・プレトは相当な部隊を率いてきたが、マックスの活躍により彼らを退けることに成功する。サーバルームでセキュリティシステムを稼働させることもできた彼は、建物内の残党を始末しながら、ロドリゴの安否を確認するため彼の部屋に戻った。
しかし、ここでもマックスの予想を裏切る事態が発生する。ロドリゴは施錠された室内で、頭部を撃ち抜かれて死亡していた。セキュリティカメラのデータも持ち出されていることから、内部の事情を知る何者かによる犯行であることは明確だった。更に追い打ちをかけるように、ロドリゴのデスクに仕掛けられていた時限爆弾が爆発するも、寸でのところで異常に気付いたマックスは爆風の直撃を免れた。火災で崩落する建物の中からやっとの思いで脱出したマックスは、虫の息だったクラチャ・プレトの残党を尋問して彼らの目的を問いただした。なぜロドリゴを恨むのか?なぜロドリゴを殺したのか? しかし、予想外の答えを聞かされる。「我々はお前を殺しに来た」と。クラチャ・プレトはスタジアムでのケリをつけに来たのだ。狙いはマックス一人であり、ロドリゴなどは端から眼中になかった。マックスは真の暗殺者はほかにいること、そして自身が嵌められたことを悟った。
四面楚歌
ロドリゴのオフィスから無事に脱出できたマックスであったが、彼がおかれている立場は非常にマズイ状況にあった。行方不明の身代金、雇い主であるロドリゴの死、オフィスの焼失 これら全てがマックスに繋がっていた。ロドリゴを殺して金を持ち逃げしたように見られても仕方がない状況だった。マックスは引き受けた仕事のケリを付けるため、ファビアナの捜索に向かった(Chapter7 A Hangover Sent Direct from Mother Nature)。
自身に向けられた疑いを晴らすという意味もあったが、妻子を失うという過去を背負っているマックスは、ロドリゴへの弔いの意味も込めて、せめてファビアナだけは救い出したいという思いがあった。クラチャ・プレトの残党から聞き出した手がかりを頼りに、彼はノヴァ・エスペランサと呼ばれるスラム地区を目指したが、地元の人間ではなく、言葉の通じない状況で捜索が容易に進展するはずもなかった。更に悪いことに、観光客のように浮いていたマックスは、追剥に会い身ぐるみを剥がされてしまう。パソスへコンタクトをとろうと電話があるバーに立ち寄ったマックスは、そこで地元警察のウィルソン・ダシウバという人物に声をかけられる。
ビクターの影
ダシウバはスラム地区で頻発している住民の失踪事件について捜査しており、一連の事件とブランコファミリーの接点を見出していた彼は、マックスに捜査情報の一部を話してくれた。汚職と賄賂が横行するサンパウロにおいては、同僚の警官といえども容易く心を許すわけにはいかない。ダシウバは単独で捜査を続けていたが、マックスの置かれた状況から、彼が悪人ではないことを感じ取っていた。
ダシウバは以前からブランコファミリー(特にビクター)の動向に注目していた。クラチャ・プレトはその過激な活動内容から右翼系の政治家に人気があり、特にビクターとは古くから親交があったらしい。ロドリゴが不動産の再開発を目指していた地域に居住していた住民を、クラチャ・プレトを使って強制的に掃討した事件があった。もちろん公的には「交渉によって立ち退いてもらった」ことになっているが、一目に触れないところで無垢な住民の血が流されていることは明らかだった。
スタジアムでコマンド・ソンブラと身代金の引き渡しをすることを事前にクラチャ・プレトが掴んでいたこと、そして騒動の最中にも警察が押し寄せてこなかったことから、これらの顛末にはビクター、クラチャ・プレト、UFEが絡んでいるのではないかとダシウバは考えていた。捜査の状況を進展させたいダシウバは、マックスに銃を提供し、ファビアナが捉えられているであろうコマンド・ソンブラの拠点の場所を教えた。マックスは捜査に協力する気はさらさらなかったが、八方ふさがりな状況では前に進むしかない。ファビアナを見つけられることを願いながら、コマンド・ソンブラの拠点を目指した。
ファビアナの死
コマンド・ソンブラの拠点はわざわざ探し回る必要などなかった。スラムの奥地に進むにつれ、ギャングの攻勢は激しさを増していく。敵拠点の中心部に近づいている証だった。激しい戦闘をかいくぐり、小高い丘の頂上に位置する建物についたマックスは、そこがボスの根城であることがすぐにわかった。建物の中にはファビアナが捕えられており、身代金を抱えたジョバンナ(ファビアナの妹)とマルセロの姿も見えた。誘拐犯の懐に大金を持って飛び込むなど、狂気の沙汰で交渉がうまくいくはずもなかった。案の定、ギャング共は素直にファビアナを解放するようには見えず、むしろ用済みとなった人質もろとも始末される恐れすらあった。マックスは形勢不利を承知の上で部屋に飛び込んだが、多勢に無勢の状況をひっくり返すことはできず、激怒したセラーノ(コマンド・ソンブラのリーダ)によりファビアナは射殺されてしまう。
またしても「守るべき女性」を殺されてしまったマックスは、今は亡き妻に思いを馳せていた。(前回の回想シーンの直後にフラッシュバック。アンソニー・デマルコの襲撃から逃れた直後に戻る(Chapter8 Ain’t No Reprievement Gonna Be Found Otherwise))。「ニューヨークから離れる前に最後の別れをしたい」と、妻子の墓前で花を手向けるマックスをデマルコの部下が急襲する。なりふり構わないデマルコはマックスの首に多額の賞金をかけ、それを聞きつけた賞金稼ぎが一夜のうちに集結していた。
マックスとパソスはさながら軍隊のように多勢になった敵の包囲網を突破し、友人の手引きを経てニューヨークからの脱出に成功する。(フラッシュバック終了)
クラチャ・プレトとUFEの癒着
多勢に無勢を承知で踏み込んだコマンド・ソンブラの拠点で、マックスは囚われの身となり、人質であるファビアナも射殺されてしまう。万事休すと思われた矢先、ヘリの轟音と銃声が響いた。UFEがスラム街を急襲したらしい。セラーノはマックスの処分を部下に託し、マルセロとジョバンナを連れて脱出を図った。取り残されたマックスもギャングの隙をついて逃げ出し、彼らの後を追う。(Chapter9 Here I Was Again, Halfway Down the World)どうやらUFEの目的はファビアナやマルセロ達の救出ではなく、ガサ入れのようだった。動く者を手あたり次第に射殺していく様子から、共闘は期待できないと判断したマックスは、UFEとギャングの両方をいなしながら人質の捜索を進めた。
その後、UFEに連行されるマルセロとジョバンナを目撃したマックスは、彼らを追跡する過程でとんでもない光景を目にする。UFEは非武装の男女を大量に拉致して大型のバスでどこかに輸送しようとしており、更にその交渉相手がクラチャ・プレトのミロ・レゴであった。”バスの乗客”を値踏みするように眺めるミロ・レゴ、彼と交渉成立の握手を交わすバハマイヤー(UFEのNo2)の様子を見る限り、このような人身売買は初めての取引ではなさそうだった。そのままミロ・レゴの後をつけたマックスは、UFEから引き渡されたマルセロとジョバンナがまさに処刑されようとしている場面に遭遇する。UFEのガサ入れを正当化するために、誘拐や殺人がギャングのものである証拠を残すべく、ギャングのやり方に則った残酷な方法で処刑が行われようとしていた。マックスは丸腰の不利を承知で飛び込み、ミロ・レゴを殺してジョバンナの救出に成功するも、既に身動きの取れない状態で火をつけられていたマルセロを助けることはできなかった。
パソスの裏切り
ジョバンナとスラム街を脱したマックスは、公衆電話を使ってパソスとコンタクトすることに成功する。(Chapter10 It’s Drive or Shoot, Sister)彼がヘリで救出に来るまでの間、近くの廃車置場で身を隠すことにするが、マックス達の行動を追跡していた警官に密告され、クラチャ・プレトの一団に襲われてしまう。数で勝る彼らは、じわじわと二人を追い詰めていった。マックスはパソスと合流する予定の小高いビルの屋上にジョバンナを一人向かわせ、自身は囮となって敵をひきつけた。重火器で武装した集団に四方から攻め立てられ、絶体絶命の状態であったが、彼の到着まで何とか持ちこたえた。近づいてくるヘリの音にパソスの救援を期待し、意気高揚するマックスだったが、ジョバンナをピックアップしたパソスはあろうことかマックスを見捨てて早々に脱出してしまう。
満身創痍で弾薬も尽きかけており万事休すと思われたが、突如スラム街のバーで出会った警官ダシウバが現れ、マックスを救出する。街中での騒ぎを聞きつけ、駆けつけてきたらしい。旧友の裏切りに呆然とするマックスに、追い打ちをかけるようにダシウバが問いかける 「お前たちは本当に旧友なのか?」と。彼の情報によると、パソスはマックスと組む前から、数度に渡ってビクターから金を受け取っていたらしい。「どこまでが仕組まれた出来事なのか?」 四面楚歌な状況で解決の糸口を手繰り寄せるべく、マックスは過去の出来事に思いをはせていた。
ビクターの影
マックスがパソスの民間警備会社に入ってから最初の任務にフラッシュバック(CHAPTER11 Sun Tan Oil, Stale Margaritas and Greed)。パソスと自らの関係を訝しんだマックスは、彼とついた最初の任務に思いをはせていた。それはブランコファミリーの3男であるマルセロとの仕事で、パナマのバカンスに警護として動向するというものだった。貸し切った巨大なクルーザーで開催されるセレブな招待客とのカクテルパーティーを横目で眺めているだけの簡単な仕事のはずだった。耳障りな音楽と喧騒に嫌気がさしていたマックスは酒をしたたかに飲んだ後、自身の部屋で寝入ってしまうが、その間にクルーザーはゲリラに占拠されてしまう。
彼らの目的は金庫室にある大量の現金だった。マルセロはビクターの指示で、バカンスを隠れ蓑にしてパナマに現金を運んでいる最中であり、それが物騒な連中をひきつけてしまったらしい。ビクターはいわゆるアンダーグラウンドな商売に手を染めていて、その収入をマネーロンダリングするためにパナマの”銀行家”を利用しており、マルセロはビクターの手先として使われていた。ブランコファミリーほどのセレブなら金に困ることはなさそうだが、実情は兄弟によって懐事情は大きく異なっていた。長男のロドリゴは自身のビジネスで潤っていたが、ビクターとマルセロはそのおこぼれに預かっているに過ぎなかった。実際、ビクターの選挙資金は兄のロドリゴがスポンサーとして捻出していた。ビクターは巨大な兄の資産を自分のものとすべく画策しており、そんな中でスケープゴートとして目をつけられたのがマックスだった。ニューヨークでのパソスとの出会いは偶然ではなく、仕組まれたものだった。(フラッシュバック終了)
臓器密売ビジネスとビクターの暗躍
マックスにとって、ビクターの企みと背後にある大きな陰謀を暴くことが、この事件にケリをつけるためにできる唯一の道だった。彼はダシウバの依頼で、スラム街での大量失踪事件の痕跡を追うことにする。(Chapter12 The Great American Savior of the Poor)公に動くことができないダシウバに代わり、マックスはインペリアルパレス・ホテルという巨大な廃墟へと調査に乗り込んだ。ホテルの中ではスラム街で拉致された人々が軟禁状態に置かれており、一人ずつ臓器を摘出されては焼却処分されるというおぞましい行為が行われていた。ホテルは臓器密売のための”加工工場”として運用されており、それを取り仕切っているのがクラチャ・プレトだった。彼らはUFEから武器の供与も受けており、両者の協力関係は明らかだった。スラム街の治安維持や犯罪の一掃をスローガンに警察やUFEの活動を誘導するのが政治家であるビクターの役割、実際にスラム街での武力行使と民間人の拉致はUFEが行い、それを引き渡されたクラチャ・プレトが臓器密売を行うというものだ。
軟禁されている者の中にはファビアナを誘拐したセラーノの姿もあったが、マックスは彼を含めて、生き残った民間人を解放し、ホテルを占拠していたクラチャ・プレトを壊滅させた。戦闘のさなか、救援にかけつけたパソスがマックスの窮地を救った。彼は臓器密売を含む事前の全容は把握しておらず、ただビクターに言われるがまま動いていただけだった。激怒したマックスに殺されるのではとの思いから逃げ出したが、借りを返すために戻ってきたらしい。マックスとの和解後、妊娠中のジョバンナのためにパソスはこれ以上事件へ関わることを避け、姿を消すのだった。
敵中突破
臓器密売の拠点とクラチャ・プレトの私兵団を壊滅したことはマックスとダシウバにとって大きな一歩だったが、逆に追い詰められたビクターはUFEのベッカーに助けを求めた。軍隊に比肩する装備をもつ組織の中枢に逃げ込まれたことで、ビクターへ近づくことは難しくなった。一計を案じたダシウバの提案でマックスはUFEに出頭(Chapter13 A Fat Bald Dude with a Bad Temper)。一時的に署内で軟禁・尋問されることになったが、ダシウバの手配したギャングがUFEの拠点を急襲するタイミングに合わせて、活動を開始した。捜索の過程でロドリゴのオフィスから盗まれた監視カメラのデータを発見し、暗殺の真犯人がUFE No2のバハマイヤーであることが判明。彼を追い詰めてロドリゴの敵をとることに成功するが、惜しくもベッカーとビクターは逃してしまう。
最後の決戦
ベッカーとビクターの高飛びを防ぐべく、マックスとダシウバは空港へと急いだ(Chapter14 One Card Left to Play)。プライベートジェットでの脱出を図るビクターは、空港内のいたるところにUFEのメンバーを配して出発までの時間稼ぎを試みたが、マックスの活躍によりベッカーを殺し、ビクターを逮捕することに成功する。「どうせ、すぐに出られる」そう豪語するビクターだったが、逮捕の1週間後に彼は拘置所内で首をつって自ら命を絶った。また臓器売買に関わったUFEも、組織の解体が発表された。陰謀の首謀者は死に、その片棒を担いだ者達にも制裁が下され、マックスの中でようやく事件の幕が閉じたのだった。